私は犬を猫かわいがりする方ではない。
 犬に洋服を着せたりはしないし、猫なで声で名前を呼ぶこともしない。
 犬の話なのに「猫かわいがり」だの「猫なで声」だの、日本語のおかしさは重々承知しているが、他に表現を思いつかなかったのでご容赦願いたい。
 リードや首輪だって、実用一点張りのシンプルで丈夫な皮製だ。
 犬は犬として扱うというのが私の方針である。
 決して擬人化などしない。

 人に聞かれれば、
「本当にうちの犬はバカ犬で…。」
と語っている。謙遜ではない。
 だって、本当に無芸な犬なのだ。
「ウチの子自慢」なんて一切なしである。
  
 しかしですね。犬というのは、本当に飼い主が好きなのだ。
 ひよこが始めて見る動くものを「親」だと思うのはインプリンティングだが、犬というのは「この人(達)が私の飼い主」と決めたら、一生忠誠を誓いぬくのだ。
 その美点は認めよう。

 薄汚い人を悪くいう言葉で、
「○○は××の犬だ。」
っていうのがありますよね?

 本当に心の底から、
「お前は小枝の犬だ。」
とでも言いたくなるほど、慕ってくれるのが飼い犬というものなのだ。
 それは、おバカな犬も利口な犬も変わらないんだなぁと思う。

 
盲導犬クイールの一生で私が印象に残っている部分に、クイールがご主人が市役所で仕事をしている足元で、何時間も伏せをしたままおとなしく待っている、というシーンがある。
 私が思うに、それは犬の本能に従った行為で、うまくしつけをすればそれくらいのことは任意に出来るかもしれないと思う。
 勿論、犬は犬種によって性質が大幅に違うので、じっとしているのが嫌いな犬種も多いことだろう。

 しかし、我が犬の場合も、私が机に向かっている時は何時間でも足元でうずくまって眠りつづけている。何となく、いい子にしているというより、単に怠惰なので動かないというだけの気もしないではないが…。
 ともかく、クイールのような賢い犬でなくても、「飼い主の側にいる」という芸当なら難なくこなすのだ。そこには一種の感動を覚える。
 この性質により、料理をしたりする時は、逆に付きまとわれて邪魔なのであるが…。

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 ちなみに、このように手なずけるために、私が特別に策を弄したというようなことはない。普通にえさをやり、たまに散歩に連れ出し、自分が気の向いたときに遊んでやるだけである。
 しかも、こちらの都合が悪いときは、邪険に追い払ったりもしている。
 それでも、向こうが一方的に勝手に無心に慕ってくるのだ。
 
                          *梅が咲いてます*


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 その他にも、我が犬を見ていると、
「本当に犬って『三遍回ってワン』って言うんだなぁ」
と良く用いられる表現が極めて妥当であることに、妙に感嘆させられたりもする。
 私が帰宅してハウス(おり)から出してやると、本当にしっぽを振り回しながら狂喜乱舞して、くるくる回って「ワン!」と吠えるのだ。
 我が犬はめったに吠えないので、「ワン」という声は、ほぼ、帰宅時のこの一声だけである。あとは以心伝心で、会話を交わしている。

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 その後で、嬉しそうに舌を出しながら、直立不動の姿勢で(これも変な日本語ですみません)お座りをして待っている様子は、けなげという他はない。
 これは「こんなにいい子だよ」という自己アピールである。
 一生懸命、構ってもらえることを期待して、おとなしく待っているのだ。

 それが証拠に、こちらがうっかりなでてやるのを忘れると、ゴミ箱をひっくり返しに行くために猛ダッシュする。
 そして、激しく怒られると妙に嬉しそうにするのだ。
 こういう時は「無視するように」と犬のしつけの本には書いてある。
 何故なら、構って貰えることが犬にとって無上の喜びだからだ。
 だが、こちらも帰宅してすぐは疲れ気味だし、反射的に怒ってしまうのだ。
 完全に敵の術中にはまっているというわけだ。
 ちなみに、我が犬が、ゴミ箱をひっくり返すのは、主に帰宅時のみである。
 構って貰えるためなら何でもするのだ。

 ところで、さっき、「私はウチの子自慢はしない」と書いたが、それは嘘であった。
 さっきから、ずっと得意げに犬の様子を書き連ねている。
 それが、他所様の前ではどんなに謙遜していても、飼い主の本心というものなのだろう。

 アニマル・セラピーというのがある。
 グループ・ホームなどにセラピー犬が訪れて、効果があがったなどという報告も多いようだ。でも、他所の犬でもそんなに癒されるとは知らなかった。
 私が癒されるのは、主に、ウチの犬だけである。


人はなぜ動物に癒されるのか―Kindred Spirits

 この本は、私のような愚かな者たち同士が、
「ブルータス、お前もか!(歴史の知識に今ひとつ乏しいので、引用が明らかに間違っていると思いますが済みません)」
と共感し合える本だと思う。
 世界中の愛犬家が、いかに「自分と愛犬の気持ちが通じているか」を自慢に思っているかを知り、握手したいような気分になる。

 どうぞ、そういう方だけお手にとって下さいませ。
 勿論、こういう人々を「馬鹿だなぁ。」と思っている人が研究のために読んで頂いても構わないと思う。


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