今、マクドナルドにいます。
 例によって、他に少し長居できそうな適当な店がなかったという消極的選択です。
 過去記事:アメリカ語ものがたり

 ここのマクドナルドは、一回が販売レジで、二階以上が客席というスタイルです。
 二階の座席は満員だったののですが、その中で異彩を放っている四人連れがいました。ありがちな、下げズボンでピアスの高校生位の男の子四人です。
 そういうファッション自体は、そこら辺のごく普通の善良な男の子もしているスタイルです。真面目な女の子もみんな制服のスカートを短くして履いているのと同じで、単なる流行です。
 
 単純に仲間の同質性を高める行為であり、必ず通る通過儀礼のようなものです。
 そういう意味で、私は特に悪いとは思いませんが、多分人によっては少々不良っぽいと感じる人もいるでしょう

 そんな彼らが、何故異彩を放っていたかというと、彼らは、まず四人で八人分の席を占領していたのです。しかも、花粉症の季節のせいもあり、彼らのテーブル周辺には、大量の丸めたペーパータオルが散乱しています。見ていると、マックの紙ナプキンで鼻をかんでは、床に落としていっているようでした。

 しかし、ここまでは取り立てて驚くべきことでもないかもしれません。彼らはいわゆる「ギャング・エイジ」の男の子達。
 マックといえば、高校生の溜まり場ですし、そこに少々態度がよろしくない高校生がいること自体はごく当たり前です。
 
 実のところをいうと、驚きの最大の理由は、彼らのテーブルには、飲み物も食べ物も何も置いていなかったのです。つまりその四人は、何も注文せずにその席でお喋りをしていたのです。
 普通は、いくら高校生でも、お店に入る以上は飲み物くらいは購入するでしょう。いくらお店の人の目がない座席でも、何も買わずに利用する人は、まずいません。

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 来店する人は、彼らを必ず驚きの表情で(こういう表情は世界共通です)ちらっと見て、それ以降なるべくそちらを見ないようにして、席に座ります。
 勿論、一応、私も同じ行動をとります。
 
 しかし、私としては、それほどの不快の念は正直言って覚えていません。
 こうした理不尽な行動に、強い怒りを感じるタイプの人もいるでしょうが、私はあまりそうしたタイプではなないということもあります。
 多分、こうしたいわゆる「マナー違反」程度でいちいち反応していては身がもたないという、心の防衛機制および慣れというのもあるのでしょう。

 しかし、彼らの占領している座席周辺は、混雑している店内にも関わらず、誰も座ろうとしません。
 彼らを特に見ない振りをしようとしているのは、若い女性などよりも、わりに年齢層が高めのサラリーマン風の男性が多いのが興味深いところです。
 これは実際のところ、過去の何とも形容しがたい痛ましい事件の影響なのでしょう。
 これらは本当に「新しい問題なのでしょうか?」


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 少年には、実際のところ成長の過程で年齢が上の世代の男性をうとましく思う心理があるのは否めません。
 過去のボスを追い出さなければ、自分がボスになれない動物社会の枠組みと同じことなのでしょう。
 勿論、それが犯罪に発展するのは論外と言わざろうえません。
 それとは逆に、いわゆるメンターとして、年上の男性を父と慕う心理もあります。丁度ルーク・スカイウォーカーとオビ・ワンの関係です。
 過去記事:
ルーカス帝国の興亡―『スター・ウォーズ』知られざる真実
 
 しかし、いずれにしろ、恐らく少年は上の世代を乗り越えて成長しなければいけないのでしょう。それは私達女性には分からない葛藤であり、単純に揶揄したりしてはいけない問題だと思います。

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 一時間が経過しました。
 ちなみに、私が何故、そんなにマックに長居しているかというと、実は人を待っているためです。
 私は、自分の仕事をしていたため、彼らの存在は忘れかけていました。
 急に思い出したのは、店内を巡回する店員さんが目立つようになってきたためです。
 あまりにも長時間なので見過ごせなくなってきたのでしょう。
 何度となく、店員さんが、紙くずが散乱した床を掃除したり、ゴミ箱を片付けに来たり、彼らの周りをうろうろするようになりました。
 しかし、彼らに言葉で直接注意をするわけではありません。
 態度でプレッシャーをかけているわけです。
 こういうご時世ですから、「何をされるか分からない」という恐怖が先に立っているのでしょう。

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 二時間が経過しました。
 別に暇なわけではありません。
 私もやむを得ない事情があるとはいえ、随分、ここに長くいるものです。
ここまでマックに長居したのは久しぶりです。
 隣の男性もパソコンでなにやら真剣に何かを書いています。
 ご同類ですね。
 その間に、店内のお客は当然ながらどんどん入れ替わっていきますが、彼ら四人組は、まだ同様に八人分の座席を占領しておしゃべりをしています。

 段々と、店員がその辺りの席を巡回する頻度も増えました。
 今度は、女性店員だけではなく、少し年上の男性店員(恐らく店長)が何度も机を拭きにきたりしています。しかし、彼らに注意を促すことはしません。
 掃除をしているはずなのに、全身に緊張感がみなぎっています。
 男子高校生というのは、それ以外の人にとっては、そこまで「恐怖」の対象なのでしょうか。
 私は、それらの「店員は、何故誰も彼らに注意を出来ないか」という心理に、ますます興味を抱き始めました。

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 また少し、時間が経過しました。
 最後に、まだ十代と思われる女の子の店員が彼らの元にやってきて静かに言いました。
 多分、上の人に言われてきたのでしょう。
 もしそうだとしたら、随分、ひどい上司です。
 こんな女の子に引導を渡す役割を押し付けるなんて、何かあったらどうするつもりなのでしょう。

 とにかく彼女は丁寧に言いました。
「申し訳ありませんが、そろそろお席を開けていただけないでしょうか?」
 
 すると彼らは、以外にもあっさりと
「あっ。分かりました。済みません。」
と謝ると、
「そろそろ行こうぜ。」
と一斉に帰り支度を始めました。

 帰り支度をしている彼らの様子は、本当に普通の高校生そのものです。

 何だか、拍子抜けする結末です。

 それにしても、この彼女は偉いです。
 単純に「マクドナルドでバイトをしている若い女の子」などといって、馬鹿にしてはいけません。
 他の店員(お客も)の誰もが出来ないことをやったのですから。
 人間の精神の強さ≒勇気は肩書き、年齢、性別では規定されないといういい見本です。

 しかし、これは、この彼女が注意をしたからこそ解決した問題なのかもしれません。男性の店長が注意をしたならば、かえってトラブルになったかもしれないのです。
 もし、店長さんがそこまで熟慮して采配をふるったとしたら、お見事としか言いようがありません。

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 ところで、彼らのこうした行動は、彼らだけの問題なのでしょうか。
 勿論のこと、違います。

 忘れてはいけないのは、子供たちは私達の社会の総体を映す鏡だということです。エリクソンによれば、
葛藤を与え、集団の成員にそれを解決させないような集団(すなわち信頼感、自律性、勤勉さや生殖性が達成されない集団)は、進化の過程で淘汰されてしまう」ということです。

 今、彼らがこの場に存在しているということは、他でもなく、私達の社会の歴史の経緯が、彼らの存在とその出現を許しているという意味なのです。
 こうしたことの増加は、恐らく母親の問題というより、社会を牽引する「父性」の相対的減少の結果であるように思えてなりません。
 過去記事:シルダの町の人々
 少子化に伴い、世の中には母性が過剰なほどあふれています。
 それを女性側の精神的な問題として片付けようとする考えも根強くあります。しかし、母にとって「子供を愛する」というのはアイデンティティのひとつであり、それ自体が病的な心理でありません。
 ましてや、言われているほど子育てがゆがんでいるわけではありません。
 母は、母にしかなれないのです。
 
 むしろ、経済活動の場以外から、男性が姿を消してしまったという問題が大きいのかもしれません。

 男の子には、父、もしくはそれに代わる存在が必要なのです。

 これには、個人レベルのことだけではなく、社会全体の父性の総量も関係しているように思われてなりません。

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 話は変わりますが、実際、人間の社会で、恐れられている立場の人は何をしても他人から注意を受けることはありません。
 この恐れられている立場の人というのは見かけが恐そう、というような理由だけではありません。
 彼らは確かに、体格も良かったし、けんかをしたらかないそうにない人々でした。しかし、「恐怖」の背景には、いわゆる「切れやすい十代」などの報道の影響も大きかったでしょう。

 このように「誰も何もいえない立場」に自らを意図的に置くことで、故意に利得を得ようとするやり方さえ存在します。
 誰も何もいえない立場に自分を見せる方法は、肉体的に屈強に見せるというだけではなく、背景に強い立場の人がいるように見せたりするような手法も存在します。
 また、倫理的に相手をがんじがらめにするという心理戦も存在します。批判する相手を「悪者」にするような仕組みを作り上げるという方法です。

 批判されたり、怒られたりするのは、いつだって「弱そうに見える」「何を言っても構わない」あるいは「強者だからどんなに叩いても構わない」と人から思われがちな人々です。
 これがもし、他の種類の人だったら、もう少し早く注意を受けていたことでしょう。
 
 あの少年たちは、それらを意図的に利用したわけではなく、単純にマナー知らずだったのでしょう。


男の子って、どうしてこうなの?―まっとうに育つ九つのポイント

 この本は、男の子を教育するにあたって心がけるべきポイントを平易にユーモアを交えて解説した本です。
 内容は、一見軽く見えて、かなりしっかりしていると思います。
 「小さな男の子」もしくは「大きな男の子(?)」の教育に関心があったり、お悩みのお母様や女性にお勧めです。
 男性が自分を振り返る意味で読んでも、面白いと思われます(著者は男性で、男性蔑視的な本ではありません)。
 一時間ほどで読める軽い本ですので、よろしければお手にとってみて下さい。


子どもの発達心理学 新曜社

 こちらは真面目な発達心理学の本。
 こちらも大変読みやすい本。

 男女の脳の性差については、過去記事で扱っています。
女の能力 男の能力


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