誰もがみんな嘘をついている
 
 どうして人は嘘をつくのだろう?
 愛しているから、それとも憎んでいるから?
 度胸があるから、それとも臆病だから?
 抜け目がないから、それとも浅はかだから?
         (誰もがみんな嘘をついている より引用)


 「家族の美しい花」であるルチッラは、青い瞳で青い表紙の本を読む姿が似合う、まだ20歳の美女であった。
 その彼女が、五月のある美しい澄みきった青空の日の午後、バルコニーから身を投げた。
 その事件が起きたとき、ルチッラの姪のアリーチェは、まだ七歳であった。そして、それ以来、アリーチェは、「憧れの叔母」の死の謎に隠された「家族の秘密と嘘」に興味を抱き続けることになる。

 そして十五年後。
 アリーチェは、大学で心理学を専攻していた。
 その彼女の所属する心理学部の教授の一人であるミケーレ・アディノルフィこそが、ルチッラの死の当時の「不倫の恋」の相手であった。
 家族の皆が、彼女の死は、アディノルフィのせいだと信じていたのだ。

 彼女は、アディノルフィ教授に告げる。
「私の卒業論文のテーマは、『人間は何故嘘をつくのか』ということにしたいと思います。」
 アリーチェが、ルチッラの姪だと知っている教授は、彼女を指導することを断るが、その彼に対してアリーチェはこう言い放つ。
 「あなたは真実から逃げているじゃないですか。」

 それに対するアディノルフィ教授の答えは、
逃れられない真実がある」「でも君は、その代わりに嘘を探しているんじゃないのかな
 という謎めいた言葉であった。

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 そして、彼は、アリーチェの担当教授として、哲学を専攻する女性教授ディオグワルデイ教授を紹介する。
 そしてディオグワルディのもとで、アリーチェは、家族と自分の人生を再認する「心の旅」に出かけることになる。

 アリーチェは、叔母の経験した「死」の過程が「裏切り」などという単純な要素からは成り立ってはいないことを知る。
 そして、それを通じて、自分と恋人のジョルジュの愛が真実であるのかという問に自ら結論を下すことになるのだ。

 真実と嘘の曖昧な境界に誰もが心を揺さぶられる作品である。

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 本書の著者のジャンナ・スケロットは、男女関係理論と精神身体学を専門とする、イタリアの心理学者であり、本書では「アリーチェの論文」の形式を借りて、以下のように「嘘」を分析している。
 
A.一時的な嘘
  1.子供の嘘   
 「五歳以下の幼児の場合、嘘を嘘とみなすことは不可能である」というのが本書の著者の意見である。
  
  2.恋人達の嘘  
 本書の言葉を引用すれば、「恋をする者は、幼年期の延長を楽しむという、とてつもなく大きな恩恵を享受できる」。つまりは「ムード」という虚構の中に二人きりで浸ってしまうことこそが、「ロマンス」の本質であるというわけだ。
  
  3.治療としての嘘
 嘘が健康に良いというのはにわかに信じがたいが、患者に活力を与えるために、希望をもたせる嘘がある。いわゆる「プラシーボ効果」
などもこれに相当する。
 
B.性格に関する嘘
 1.アイデンテティの嘘  
 自分は何者なのかを探す過程において、自分のアイデンテティを虚構で固める行為。もっとも手っ取り早い嘘としては、経歴などを詐称して、相手にポジティブなイメージを与えるという簡便な手法をとる人がいる。
 
 2.中傷
 他人を支配するために、その場の状況をコントロールしようとして他者のイメージを傷つけるためにつく嘘。

 3.弁解の嘘 
 非難から逃れるために、やむを得ず、もしくは自己弁護のためにつく嘘。

 4.人に好かれるための嘘 
 誰かの意見に対して、決して賛同しているわけではないのに、調子を合わせてついてしまう嘘。
 
 5.臆病から出る嘘  
 「人に好かれるための嘘」に似ているが、内気な人が他人と対立しないために自分を犠牲にしてつく嘘

 6.人を惑わせる嘘
 自分の心の中をのぞかれることを恐れてつく嘘。
 本書の言葉を借りれば「透明恐怖症」とでもいうべき状態に陥ってしまっており、誰もが信用できないというわけだ。

 7.人を試す嘘
 自分に対する情報開示を全く行なわず、他人に対する「調査」のを行なうためにつく嘘。

 8.非常時の嘘
 「現場」を押さえられて、やむにやまれずその場を取り繕うために咄嗟につく嘘。

 9.人のための嘘
 いわゆる相手のためを思ってつく、「ホワイト・ライ」である。
 唯一の「善なる嘘」であろう。


 10.目的のない嘘
 一種の「愉快犯」的な嘘である。それに対して翻弄される人々を見て楽しむ場合もあれば、そうした目的すらない場合もある。

 11.自分自身への嘘  
 自分が「真実を知らない」ということをごまかすためにつく嘘


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