「裸のサル」の幸福論


何故人は幸福になるのか?
その理由は簡単なようで難しい。
どのように「幸福」になる条件が満たされていようとも、
それが当たり前の日常になってしまった時、人はその状態を幸福とは意識しない。

つまり幸福とは不安定な感情をベースにした、
A地点からB地点に移動する過程での刹那的な感情であるのかもしれない。

「目新しさ」に基づく強い感情以外の、
心の安定に基づく幸福もあるにはあるのだが、
それを人は幸福と強く意識することが出来ない。

そうした
「潜在意識下の幸福」
は失って初めて理解する種類の幸福である。

目新しさに基づく幸福が「カフェインをたっぷり含んだコーヒー」だとしたら、
潜在意識下の幸福は、さしずめ「水」のような普段は意識しない、
無色透明無味の存在であろう。


最新人気blogランキング!
こうした意識・無意識の幸福を、
デズモンド・モリスが独自の理由のもとに分析したのが本書である。
 
本書では幸福を以下の17種類に分類している。
 1.標的の幸福
 2.競争の幸福
 3.協力の幸福
 4.遺伝の幸福
 5.官能の幸福
 6.脳の幸福
 7.リズムの幸福
 8.痛みの幸福
 9.危険の幸福
10.こだわりの幸福
11.静寂の幸福
12.献身の幸福
13.消極的幸福
14.化学的幸福
15.ファンタジーの幸福
16.可笑しさの幸福
17.偶然の幸福

これらの幸福の種類は、科学的根拠によるものいうより、
デズモンド・モリスの人生観、個人的価値観に基づいた
独特の論理に基づいており、本書を読んだ人は誰もが
「何故幸福がこの17種類に分類されなくてはいけないのか?」
という感想を抱くかもしれない。

これらの幸福の種類は、むしろ
それぞれの個人によってどのように分類しても構わないように思える。

 *************************

デズモンド・モリスの考えるこれらの17種類の幸福の各論的な詳細は、
大変読みやすい本である、本書を是非手にとっていただきたい。

しかし、ひとつ言えるのは、
著者は本書全体を通じて、
幸福というのを
「目的物を手に入れたとき時に生じる刹那的で衝動的な興奮」
であると捉えている側面が強いということだ。

つまり、
狩猟本能を満たしたときに生じる、
ある種の動的で一過性の感情だと捉えているというわけである。

そして著者によると、
「幸福感が強ければ強いほど、それは一種の興奮によるカタルシスである」
と定義しているように思えるのである。

そして
「献身による幸福」
などは幸福の中ではより低次の、
一種の代償行為としての幸福だと捉えているような印象を受けるのである。

     ************************

それを読んだ私の率直な感想は、
「やはり、男性的な分析だなあ」
ということである。

私の個人的価値観によると、
そうした狩猟本能を満たすこと以外の、
「何かを守り育てたりすることによる静かな幸福感」
という方により強い喜びを感じていたりするわけであるので、
やはりその辺りが男女の性差なのかな?
と思ってしまった次第である。

 *************************

それはともかく、
何かを我慢したり否定したりする、
ピューリタン的な価値観によるストイックな幸福でなく、
根源的な欲求を満たすことによる
快楽主義的で陽性な幸福を、
比較的
「より上位の幸福」
として賛美しているのが本書の特徴であろう。

そうした意味では、
「我慢」
「努力」
をベースにして長期的目標としての
「将来の幸福」
を目指すという従来の価値観に一石を投じるものであるかもしれない。

 *************************

しかし、
「何かを心のおもむくままに手に入れること」
「自分のやりたいことだけを追求すること」
が是とされる現代的価値観の中で、
むしろ忘れ去られているのは、
個人の感情を抑制することであるとも言えるのかもしれないが…。

自分の中で、
こうした
「開放的な幸福」
「抑制的な幸福」
もしくは
「動的な幸福」
「静的な幸福」
のバランスをとっていくことの意味を考えていくのに最適であるのが、
本書と言えるのかもしれない。

もっとも、
より強い刹那的な幸福感を味合うために、
いまあるものを破壊して新しいものを手に入れる
破壊→建設そしてまた破壊を繰り返す心理は、
ある意味馬鹿げているし、
長期的には何の進歩も示していないわけである。

そうした
「負の幸福」
の刺激に心を慣らし、求めていく心理というのは、
やはりある意味心理的には病的な面があるだろう。

築き上げたものを残した上で、そしてまた新たな目標に向かう。

そうした本当の意味で建設的な
「正の幸福」
を目指すためには、
やはり刹那的なものに心動かされない強さが必要なのかもしれない。


この書評が面白かった方はここをクリックして人気blogランキングへ投票よろしくおねがいいたします!


元祖ブログランキング ほかのブログも見てみたい!