社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由
 ―並外れた自己洞察力の持ち主―この本の作者に対する第一の感想はこれである。夢破れたと言っても、一度は斬新なアイディアで起業をするような人間は、とにかく頭が良い―と言っても私の言う意味での頭の良さ―という意味であるが(後述)・・・・。

最新人気blogランキング!
 この本の面白さの理由は、著者が徹底した自己開示を行っていることにある。私は以前から、面白い本と面白くない本の違いを決定付ける最大の要因は、「どれだけ自分の内面をさらけだすか」という点にかかっていると思っている。それは何も、自分の私生活を切り売りしなければいけないという意味ではない。私小説やエッセイ以外の本であっても、「自分の心に嘘をついている」著者の書いている本は面白くない。
 
 以前、何かの本で、―昭和の女流作家岡本かの子(岡本太郎の御母堂)が作家になりたいと言った時、夫が「それは道路の真ん中で、さあ見てくださいと言って、エイッと裸になるようなことなんだよ。君にそれが出来るかい?」と尋ねた―という大意の文章を読んだことがある。
 
 まさしくこの著者は、公道でエイッと裸になってみたわけであり、それがこの本の面白さの源である。
 
 しかし、自分の魂を裸にするというのはなんと難しいことであろうか。
 
 私は真の知性とは自己を知る能力に長けていることだと確信しているが、そういう意味で著者は、かなりの頭脳の持ち主であることは間違いがない。
 
 それでは、何故、そんな人物が会社を倒産させたか?それは実際にこの本を読んでみて欲しい。会社経営者だけでなく、職場で管理職を務める人や研究プロジェクトを束ねる研究リーダーなど、人を束ねる全ての人の自己洞察力を高めるのに役立つ本であると思う。
 
 その上、面白い本に欠かせない「ストーリーテラー」としてのレベルもかなりのもので、一気に読み上げることが出来る。

 この書評が面白かった方は人気blogランキングへ投票よろしくお願いします!